「素晴らしきかな日本」
「日本は幸せな国」
いま多くの日本人が物質的に恵まれた生活をしながらも、心の空しさを抱き続けているといわれます。
しかし、日本に来日したとき、ダライ・ラマ法王はそのことむしろ「日々の生活の粒を得るのに精一杯の国の人たちは、心の問題に気づく余裕すらない。心の空しさに気づくこと自体、大きな恵みであり、日本はとても幸せな国です」と話された。
では、日本人は心の空しさをどのように克服したらよいのでしょうか。
法王はここでも、自分のためだけに生きるのではなく、人に喜びを与え尽くすことでのみ真の喜びが得られるという人間の本質を強調されました。
その上で、特に若い人たちへのメッセージとして「モラルを上げなさい。それが日本という国が世界のリーダーになる鍵です」と告げられました。
私たちは心が満たされない時、それまで以上に物質的な欲望を追い求めようとします。
しかし、それでは本当の満足を得ることはできません。
高い倫理観を持ち、怒りや我が儘な心を制しながら他のために貢献していくことが重要で、“他に与える”ことは、幸せを手にするために最も大切なのことだ思います。
あなたの行動が全体の益になっているか
本来、この世界は善一元の世界です。そして、すべてが生かし合い、助け合いの世界です。
会社や学校に無事着けるのは、電車の運転手さんがいてくれるためです。
雨が降って傘を差せるのは、それを誰かが作り売ってくださったからです。私たちは社会との繋がりなしに、何一つなすことができません。
そういう命の繋がりの大切さに思いを馳せ、自分は生かされているんだ、という感覚を自らの中に育み、全体に益する生き方を志しながら、日々暮らしたいものです。
それが一人ひとりを、そしてすべての人を幸福にする鍵だからです。
このことを若者たちは素直に受け入れていただきたいと思います。また、このことに大いに共感して欲しいと思います。
聴けば誰もがそのとおりだと領く内容のものばかりです。
しかし、法王は穏やかな口調ながら、命懸けで説かれる教えには、人生の真理に目覚めさせられるだけの強い説得力がありました。若者たちはその真理を、感動とともに心に深く刻み込んだに違いありません。
皆さんは”百一匹の猿現象〃という言葉をお聞きになったことがあるかもしれません。猿の群れが一つの行動をとり始め、それが一定数に達すると、やがて世界中の猿たちが同じ行動をとるようになる現象のことです。
人間も同じです。崩れることのないと思われていたベルリンの壁が、ある時一気に崩壊したように、一部の人たちの意識の高まりが、ある日突然、全体を変革していくことになるのです。
しかし、たとえ少数でも、全国各地で意識の高い若者たちが増え続けていったとしたら、日本は大き変わり始めるに違いありません。
日本は元々、素晴らしい国です。心ある若者たちがこの国をよくしてくれることに期待したいです。
先のワールドカップでカメルーソ戦に勝利した後の岡田監督のコメントを思い出していました。
試合当日、応援の声にかき消されて監督の指示がなかなか選手たちに届かなかったといいます。
すると、選手たちは決して個人プレーに走ることなく、それぞれの選手の長所をどのように生かしたらよい試合展開ができるかを、自主的に判断してプレーをしたというのです。
まさに選手全員が全体を益することを第一に考えたことによる勝利でした。これもまた普段の厳しい訓練の賜物だと思います。
人間は決して一人では生きていけません。ただ一人の例外もなく、自然や社会など様々な恩恵を受けて生かされている存在なのです。