「思考の三原則」

   思考の三原則  
 
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東洋古典の研究で知られる安岡正篤氏の教えのなかに「思考の三原則」があります。
 
1.目先に捉われず長い目で見る。
2.一面的に見ないで、多面的全面的に観察する。
3.枝葉末節にこだわることなく根本的に考察する。
 
「一杯の水」
 
江戸で一旗揚げようと二人の商人がやってきました。二人はようやく江戸にたどり着き、喉の渇きを癒そうとしました。
しかし、なかなか水を飲むところがありませんでした。しかたなく水売りにお金を払ってやった水を飲むことができました。
そこで、一人は、水までにお金を払うような江戸ではとても商売などやっていけないと、早々に江戸を去りました。
 
しかし、もう一人は、江戸では水でもお金になると考えて、江戸に残って商売を始めて、大成功をしたといいます。
 
現在、文明の転換期と言われる中、これからはさらに厳しい時代が予想されます。この時代を乗り切って生きていくためには、物の見方、考え方を変える必要があり、同じ現象や出来事を見ても、常にプラス見方をして物事を前向きに捉えていく必要があります。
 
 
「最も強い者や賢い者が生き残るのではない。生き残るのは変化に即応できる者だけだ」
といっています。
 
目の前に突然、変化が現れたとき、右往左往するのではなく、目先に捉われず、長い目で見る心、一面的に物事を見るのではなく、多面的全面的に観察する心、取るに足りない事柄にこだわることなく、根本的に考察する心を養うことが重要で、このことを実践していくことで時代の変化に対応していかなければなりません。
 
したがって、私たちは大きな変化の時代を生きていくためにも、その大きな変化がある中でも、自然界に一定のリズムがあることを感じることが大切です。
保ち、人間も自然の一部として、肉体の機能の中にこの不変のリズムが刻みこまれています。この “不変のリズム”を正しく把握しながら、変化に対応していくことの大切さを生長の家総裁・谷口雅宣先生は次のようにお説きくださっています。
 
そういう意味で、この21世紀初頭の変化の時代でも、古人の知恵に不変のものを見出してそこから学ぶことは非常に重要だと思います。
今、世界の自動車産業が直面している変化を見るとよく分かります。
“ビッグ3”の経営危機が問題になっていますが、これは地球温暖化と石油資源の枯渇という2つの大きな流れを読むことができなかった、アメリカの自動車産業の対応の誤りであると言えます。
 
しかし、これは今だから言えるのであって、10年ぐらい前は、大型で燃費の悪い、しかし馬力のあるアメリカの自動車はどんどん売れていたのです。また、アメリカではガソリンへの税金が少ないので、燃費の悪さも家計への負担にならなかった。それに比べて日本では、ガソリンへの税負担が大きく、そのために燃費の良い自動車を開発しなければ消費者が買ってくれないという、メーカーにとっては“不利”な条件が課されていたのです。
 
 しかし、この一見“不利な条件”が課されていたために、日本のメーカーは必死になって小型化や軽量化などをして燃費の改善に取り組み、優秀なロータリー・エンジンとかガソリンと電気を使う“ハイブリッド動力”などの画期的な技術を開発した。そして、今の産業全体の流れを生み出し、“ビッグ3”を追い越してしまったのです。一見“不幸”と見えた条件が“幸福”を生み出しているのです。
 
 しかし、この“幸福”は一朝一夕で実現したのではなく、諺の言葉を借りれば「牛の歩みも千里」に達するという信念のもと、コツコツと努力を積み上げていくことで本当に“千里”(大きな成果)に達したわけです。
 このように考えれば、我々の目の前にある“不幸”や“不運”などは、実は次の時代の“幸福”や“幸運”につながっていることが分かります。別の言葉で言えば、本当の意味での“不幸”や“不運”などは存在しないのです。それは、我々の適切な対応を引き出すための“呼び水”であり、“招待状”である。我々はその招待状に書かれた言葉を正しく理解し、正しい方向に舵を切り、そして「牛歩千里」の信念のもとに努力を積み重ねていくことで“幸福”をつかむことができるのです。
       (生長の家総裁・谷口雅宣先生著『小閑雑感 Part 15』