「大海に石を投げる」

  本当の幸福とは  
 
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多くの犠牲者を出し、たくさんの被害をもたらした3.11東日本大震災から半年が過ぎました。
この震災から学んだことも多く、人間が物質的繁栄を目的とし、唯物的な価値を追い求めることが幸福の源泉だと考え、自然破壊を続けてきた人類への警告であると受け止めることもでき、人間至上主義を優先させ、自然の力を侮った傲慢な生き方の結果であるとも言えます。
 
しかし、この震災は、今後、日本が大きく変わるための一つのポイントでもあるとも思います。これまで日本は高い経済成長率を誇り、高度な医療、消費や所得が多い国として知られていますが、このような中、地球環境を破壊しながら成長を遂げて、うつ病に悩む人も多く、人々は本当に幸せだろうかと思う人もいるのではないでしょうか。一段と金融危機の関心が高まる中、人間の本当の幸福とは何かを真剣に考える人々が増えつつあります。
 
ところで、2007年に初めて行われたブータン政府による国勢調査は、「あなたは今幸せか」という問いに対し9割が「幸福」と回答しました。ブータンの国王・ジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク氏は1970年代、今後のブータンの国づくりを探るため、日本を含む欧米先進国を研究したそうです。そして国王が出した結論は「欧米は国民総生産 (Gross National Product, GNP) を伸ばすという方向性で国づくりをしている。しかし自然環境は破壊され、人の心はすさみ、文化は継承されなくなっている」というものでした。結果、GDPを追求してもいいことは何もない。だったら、国民総幸福量Gross National Happiness, GNH)を大事にしようという結論を得たのでした。GNPで示されるような、金銭的・物質的豊かさを目指すのではなく、精神的な豊かさ、つまり幸福を目指すべきだとする考えから生まれたもので、現在、ブータン政府は国民総幸福量の増加を政策の中心としているそうです。具体的には国の725%が森林に覆われている中で近代化をゆっくり進める一方、環境保護を大切にし、森林の開発を最小限にとどめて、国の全面積の60%以上を森林で保つこと、小中学校では週に23 時間、環境科学の授業を取り入れるなど、2004年には世界で初めて禁煙の国となったことでも注目を集めました。
 
東日本大震災を機に日本もGDPの巨大な幻想に気づく時が来ているような気がします。今回の東日本大震災では、日本の精神的モラルの高さが評価され、助け合いの精神が注目されるようになりました。また、今回の災害のブランティア活動にも率先して駆けつける若者もたくさんいたことから、人間の本質に目覚め始めてGDPからGNHに価値観をシフトさせつつあることが伺われます。
 
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嘗て、ソーニーでCDの開発や犬型ロボ「AIBO」の発表で話題を集めた天外伺朗氏は現在、医療改革や教育改革に携わっています。その天外氏は「日本を一つのバスにたとえたら政治経済もだいぶポンコツになってきた。運転手を代えても変わらない。政権交代してもちっともよくならない。だったら、バスを嘆いてばかりいないで、みんなバスから降りて自分の足で歩きましょう。バスに乗って連れて行ってもらおうという意識を捨てて、自分の足で歩き出して見て欲しい」と呼びかけています。
 
生長の家総裁・谷口雅宣先生は「私たちが森の中にオフィスを構えるのは、大海に石を投げるようなものかもしれません。でも、人間は愚かではありませんから、その“音”を聞いて、『自分も石を投げよう』と思う人もいる。そういう人の数が増えてくれば、“島”を造ることができるかもしれない」(“森”の中へ行くP41とお説きくださっています。日本の新生のため、新たな文明の構築のために、早くポンコツバスから降りて、“自然とともに伸びる”生き方を自ら歩み出さなければならない時です。
 
自然の中に神を見出し、自然を敬い、自然と調和する生き方を開発し、その生き方を広めていきましょう。