夢は叶う


真の願いは必ず実現する
 
衆生無辺誓願度」という言葉について、泰道先生は『雑宝蔵経』という仏典にある警え話を使ってよく説明されたものを聞きましたので紹介します。
それは一羽の小鳥を巡る実に味わい深いお話です。
 
山に餌を探しに来た一羽の小烏が道に迷ってしまいます。すると、動物たちが現れて、食べる物や眠る場所を与えて介抱し、小鳥はいつしかその山に暮らすようになりました。ところが、ある日、風に吹かれた木々が擦れ合ううちに火がおこり、あっという間に火は森全体に燃え広がってしまうのです。
最初こそ、ライオンや象などの動物たちも火を消そうとしましたが、どうにも手に負えなくなって皆山から避難することにしました。
ところが、ふと振り返ってみると、あの一羽の小鳥が近くの池に飛んで行っては羽に僅かな水滴を浸し、火にかけ続けているではありませんか。羽も真っ黒に焦げかけています。その様子を見た動物たちは、「無駄なことは止めよ。我われが力を尽くしても到底できないことなのに、あなたが数滴の水を羽に浸してかけたとしても、この火を消せるはずがない」と口を揃えます。
ところが、小鳥は「私がいくら頑張ったところで火を消すことができないのはよく分かっています。けれども、私はとの森にお世話になりました。お世話になった森が
燃えていくのをただ黙って見ているわけにはいか-ないのです。私は自分の命がある限り、水をかけ続けますしと答えたというのです。
それを聞いた動物たちは、「あの小さな小鳥でさえ頑張っているのだから、私たちも努力しないわけにはいかない」と、引き返してきたのでした。その様子を神々がご覧になって火を消してくださった。
そういう警え話です。仏典には、火を消そうと願った小烏こそ、お釈迦様の前世であったと説かれてあります。
この話には私たちが学ぶべきことが多くあります。この小鳥のように無駄なことだと周囲から言われてもやむにやまれぬ気持ちで何かを実践し続けていくと、その姿を見た人たちがいつの間にか感化され、一緒に涙頑張り始めるのです。
山火事は神々によって消されたとされていますが、これはきっとその願いが次の世代へと受げ継がれ、やがて現実となることを意味しているのではないかと思います。
 
『法句経』には
「ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される」
というお釈迦様の言葉があります。
あらゆるものは人の心がつくり出していくという華厳の教えですが、坂村真民先生も「念ずれば花ひらく」という分かりやすい言葉でそれを表現されています。